アイマスレイアP伝…組

「…あ、いたいた」
ビル近くの公園。
零亜が探していた女の子が背中を向けて何かやっている。
遠目に眺めても仕方ない。彼女に近づくにつれ、声がだんだん聞き取れるようになる。
「……あ、あー…うーん…少し違うかな」
発声練習のようだ。
やはりテレビに映っている子と比べると劣る所があるが、自分なんぞからすれば良い方だと思う。
「頑張ってるわね」
「きゃっ!?え、え?だ、誰…?えええ!?」
少し落ち着け。
自分を見てやたらパニックになっているのが不思議でならない。
「あ、あいきゃ…すぴー…いんぐり…あうう」
だから落ち着いてください。
下手に騒がれるとややこしいことになるに違いない。
とにかく静めなければ。
「いや、怪しい者じゃなくてね…?」
「え…あれ?日本語…」
ティンときた。
もしや原因は髪の色か。
確かに今日び、オレンジ色の髪した日本人なんて希少種だが、外人でも希少種だと思う。
下手すると自分と妹、それと染めている若者くらいしかいない。
もう少し鮮やかさが落ちれば茶髪くらいにはなるだろうが…
天海春香、さん…よね?」
「は、はい」
まだ少したじろいでいるが、とりあえず落ち着いてくれて良かった。
「えーと…んだっけ、そう、アイドルを目指してるのよね?」
「はい、そうです……え、え…もしかして…」
ここはビシッと決めておきたい。
なんかなんとなく、そうせねばいけない気がした。
「フフ…その通り!私は……」


――あれ?
また力みすぎたか、あらかじめ用意していた言葉が頭から綺麗さっぱり飛んでいってしまった。
変に硬直するのはまずい。とにかくなんでもいい、何か喋らなければ…!
「とッ…通りすがりの…異邦人よ!」

……わかる。間違いなくすべった。
どうだこの彼女のア然とした顔。自分も自分だ。何を言ってるんだ一体。
この気まずい空気を右から左にし、気を取り直して改める。
「私はレイア。哉樹零亜。今日からあなたの担当プロデューサーとして働くことになりました。…よろしくね」
右手を差し出してみる。
彼女…春香はまだ少し驚いているみたいだったが、ゆっくりとこちらの手を取り、しっかりと握りしめてくれた。






新人プロデューサー、哉樹零亜。
アイドルの卵、天海春香


今…
二人の戦いが幕を開けた。