残酷を悦ぶ男はある日こう呟いた

切り
裂き
潰し
えぐり


突き
刺し
噛み
喰らい


あらゆる残虐
あらゆる異常
自分が思いつく限りの全てを
横切る者達に尽くし続けた


休むこともなく
飽きることもなく
飛び散る紅
ちぎれる細胞


それを悦び
そして楽しみ
子供のようにそれを
ただ貪欲に求め続けた






だが
ある日気付いてしまった
自分のやっていた全ては
それには全く敵わないことに


そして思い知らされた


自分よりも
残酷の極みを
最上の悦を
死にも勝る楽しみを


『人と出会う』
ただそれだけで


全ての人は
残酷を
残虐を
無惨を


知らぬうちに
思いのままにしているではないか






自分が残虐を
尽くしているのではなく
ただ人が味わう
残虐の手伝いをしていただけ


自分は
主役になることはない


これからも
ずっと
ずっと
ずっと


人が
決してやめることのない
残虐の
手伝いをするだけ










本当の残虐は


誰でも
簡単にできるのだ