アイマスいらねえよとか言ってすいませんでした…

「ただいまー!」
と、いやにテンション高めのように聞こえる声とともに姉が散歩から帰ってきた。
こうなるのは別に珍しい事ではないが、いつも決まって何かしら理由をひっさげている。
今回は何があったのか…
みかんがキッチンから顔を覗かせると、そこに…いや、確かに姉の姿はあったのだが。
「ん?どーしたのみかん。鳩が豆…ナントカみたいな顔して」
「いや…だってそれ…その格好」
みかんの視界にいた姉――零亜は何故かスーツを身に纏っていた。
「どう?似合うっしょ」
「……えーと…」
何処から突っ込んでいいのか。
まさかスーツ姿で散歩に出たわけではないはず。ていうかスーツなんてウチにはなかった記憶が。
だとすると最初着ていた私服はどこに…と思ったらちゃんと手に持っていた。
スーツは何処から出てきたのだろうか。
そういえば散歩の時間もいつもより長かったような気がするが…。それと関係があるのだろうか。
「いやぁ、たまには違うルートで散歩しようかなと思って街の方まで出たんだけどさ。
 そしたら声かけられたのよ」
「声?…ナンパですか?」
「違う違う。もっとおっさん的な感じよ。あ、名刺もらってきたんだった」
胸のポケットに手を入れ、名刺をみかんに渡す。
「…なむ……765プロダクション…高木?」
「私の顔を見るなり『ピーンときた!』とか言ってたわ」
「はあ…」
そのピーンとした感じがいまいち伝わらない。
家事そっちのけ、未成年ヘビースモーカーの彼女の何処を見たらそんなに閃くのだろう…
…と、妹がそんなボロクソにぶちまけても仕方ないのだが。
とりあえず聞いておきたいことはひとつ。
「で、この765プロダクションってのはどんなことを?」
「アイドルプロデュース」
「は?」
さらっと言ってのけた――その一言に思わず、自然に耳を疑った。
零亜はやけに意気込んで、声を荒げながら、
「そう…私、哉樹零亜19歳…新人プロデューサーとして…レイアPとしてッ!アイドルをプロデュースするのよォォッ!!!」
…と言ってのけた。
みかんはあっけにとられながら、思わず口からこぼれそうになった言葉を、静かに飲み込んだ。






――お前は何を言っているんだ。